２００３年、地方自治法の一部改正により、それまで地方公共団体や外郭団体に限定されていた公の施設の管理業務が、民間事業者やＮＰＯ法人も可能となった。
　管理運営に民間ノウハウを採用することで、運営の効率化を目指したものだ。
　「地域に生かされ、生きる」をグループのビジョンに掲げ、地元密着の経営を続ける あなぶきグループの１社、あなぶきエンタープライズ（高松市　冨岡徹也社長）は、２００５年にサンメッセ香川の指定管理者事業へと参入。来春オープンの観音寺市民会館を含めると県内６施設の指定管理者事業運営と、三豊市詫間放課後児童クラブを受託運営する。
　同社は指定管理者事業のほか、ロイヤルパークホテル高松や高松国際ホテル、リーガホテルゼスト高松などホテル・旅館事業、アルファ津田カントリークラブなどスポーツ・健康推進事業、津田の松原および徳島・上板のサービスエリア事業を手掛ける。それら事業で培ってきた経験を生かすこと、ＣＳ経営を柱としたISO10002（ご意見対応マネジメントシステム）を導入し、継続的なサービス品質を向上することで、指定管理者事業でも着実に成果を残している。

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　高松テルサを一例に挙げると、同社により管理がスタートして以降、年間利用者数は右肩上がりが続く。高松市の発表した公の施設指定管理者制度を導入する施設の評価において総合評価Ａを獲得し、高松市も同社の管理実績に対して高い評価をしている。
　対岸の岡山県早島町では、地域の多目的施設として利用されてきた岡山テルサが閉館、解体され周辺に大きな影響を与えた。周辺エリアにとってコミュニティーの場ともなる多目的施設の重要性は明らかであり、稼働率が高まっているのは効果的に活用されている証しであろう。
　取締役 指定管理者事業部長として同事業部門を取りまとめる三村和馬氏は「指定管理事業者から、ＰＰＰ・ＰＦＩ事業における官民連携事業者へとステップアップし、同分野で香川のパイオニア的存在を目指したい」と意気込みを語る。
　三村事業部長に同社の考える地域貢献、施設管理者事業への思いを聞いた。

▽指定管理者事業の歴史を
　指定管理者事業参入の発端となったサンメッセ香川では、ホテル運営をしてきた当社にとって、同じ箱物運営ということ、それ以前からケータリングサービスでサンメッセに納入してきた実績があり、民間ノウハウを生かした運営ができるのではないかという手応えが当初からありました。
　翌年には香川県県民ホールの運営が始まりました。県の誇る最大の文化施設を運営することで、新事業のノウハウが生まれました。それがイベント・興行です。自主、共催事業は年間30本ほど実施しています。結果として県民の皆様に、良質な文化事業の鑑賞機会を提供できる体制になったのではないかと感じています。
　県民ホールがあり、高松テルサ、三豊のマリンウェーブ、そして来春から観音寺市民会館が加わりますので、複数ホールでの同じ興行をセットにした公演も可能となりました。

▽高松テルサの稼働率が高まった
　高松テルサはホテル機能（宿泊、貸館、レストラン）に加え、ホール・トレーニング施設もあるということで、それまでの社内のノウハウで全て対応できました。高松市よりお預かりして８年目に入りましたが、右肩上がりで利用者数を伸ばしています。
　人数的な面では会議室の稼働率アップが大きいですね。小さなサイズの会議室も豊富に用意していること、駐車場が無料ということも好評のようです。
　施設の設置目的が勤労者福祉ですので、勤労者に向けたスキルアップや趣味・教養のコンテンツも充実させています。
　宿泊稼働率も当社が運営する前の２００８年度に30.5％だったものが、２０１５年度は57.9％まで上昇しています。

▽生島は初のスポーツ施設となった
　香川県総合運動公園の運営に関してはコンソーシアムを組んでいます。当社が地元の代表企業として参画、美津濃、香川県造園事業協同組合の３者で、いくしまスポーツチャレンジ共同体として管理、運営にあたっています。
　四国新聞社と取り組む いくしまウオーク、ＦＭ香川と取り組む いくしまリレーマラソンなどスポーツイベントはもちろんのこと、都市公園としてスポーツ以外の利用者も来場してもらえるように穴吹動物看護カレッジと連携する「犬の運動会」などのイベントも実施しています。
　香川オリーブガイナーズの協力を得るガイナーズウェディング企画は、今年10月15日に１組目の挙式が予定されています。また、高松テルサと合同でスポーツ合宿プランも提供しています。

▽来年４月に観音寺市民会館が開館する
　こちらも地元市民の方々や観音寺市役所の期待の高さをひしひしと感じているところです。
　当社、ルネサンス、あなぶきクリーンサービス、合田工務店で設立したＮＰＯ法人が運営する三豊市文化会館にある７７０席のホール、そして新たにオープンする観音寺市民会館には１２００席の大ホールと３３４席の小ホールができます。
　観音寺と三豊と施設設置者（自治体）は別ですが、３つのホールを一体的に運営することで、ご利用のお客様にとって利便性の高い面白いオペレーションができると考えています。そうした取り組みも、民間だからこそできるのではないでしょうか。
　観音寺市からは「周辺や商店街と連携し、街を元気にして欲しい」と高い目標を頂いており、期待に応えられるよう取り組む所存です。

▽派生事業も生まれている
　あなぶきエンタテインメント㈱という、イベントや興業をおこなう別会社を設立しました。これまでの県民ホール等の実績で結ばれた東京の制作会社やプロダクションとのご縁を、さらに拡げていきたいと思います。
　昨年はスタジオジブリと一緒に県立ミュージアムでジブリ展を開催しましたし、一昨年、そして今年10月にも開催する大相撲地方巡業 高松場所も新会社が事務局を務めます。県民に広く良いものを提供できる体制が整いつつあると感じます。
　10月25日、サンメッセ香川で開かれる大相撲高松場所は、この秋場所で新入幕を果たした天風（琴平町出身）、そして琴勇輝（小豆島町出身）、希善龍（善通寺市出身）の県出身３関取が揃う、当地での地方巡業ということで注目されています。ことでん琴平線区間で、非常にインパクトのあるラッピング電車が運行されているのでご覧になった方も多いのではないでしょうか。
　当日朝８時の開場から15時の打出しまで、公開稽古、人気力士とのちびっ子相撲、相撲の禁じ手をおどけて紹介する初切など、より相撲に親しみと理解を深められる内容です。
　小さな子どもさんから、ご年配の相撲ファンまで、皆さんが楽しめる場所になります。本場所とは違った、お相撲さんとの距離の近さは、きっと心に残る思い出となることでしょう。小さな子どもさんにはこれをきっかけに、将来の角界を担う人財へと成長してくれれば本望ですね。

▽次なる目標は
　指定管理者から官民連携事業者へと事業領域を拡げていくためには、まだ時間は必要だと思います。
　その第一歩として、今春より三豊市内最大の放課後児童クラブ「うらしまキッズ詫間」の運営を受託しました。安全・安心を優先に考えた上で、穴吹医療福祉カレッジとも連携し、民間ならではのサービス提供を考えています。
　単なる箱物運営から、官民連携事業者へと進むためのチャレンジでもあります。
　今年７月、高松空港の民営化構想が発表され、２０１８年４月からの民間委託が予定されています。国の管理する空港の運営権売却は、関空・伊丹空港、仙台空港に続き３例目となりますが、あなぶきグループも地元勢や在京企業と一緒にコンソーシアムを組み、運営権の受託を視野に入れ検討を進めています。
　今後当社が目指して行くのは、我々の強み、地域社会の課題、事業の機会が重なるところであり、地域の皆さんの期待に応えられる会社であり続けることです。その３つが重なるのが、まさに指定管理者事業部で取り組んでいる事業なのです。箱物運営会社から地域社会の課題解決企業へと、私たち自身が変化していかなければならないと強く感じています。
　そして四国、瀬戸内圏へとエリアを拡大、香川にとってプラスとなるような効果を生み出していきたいと思います。（了）

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