【川鶴酒造㈱】製造部 製造責任者 統括リーダー 藤岡美樹さん
酒造りの現場は、昔から 〝女人禁制〟という仕来りが長く蔓延ってきたが、女性が社会進出し活躍する現代にあって、その慣習も少しずつ過去のものとなりつつあるようだ。
三重県松阪市出身。東京農業大学を卒業後は、奈良県、神奈川県などの酒蔵で酒造りに携わっていたが、川人裕一郎社長が大学の先輩という縁から平成19年、川鶴酒造に入社。
故郷を離れ、酒造りに情熱を燃やす〝移住者〟でもある。
ひたむきに酒造りに取り組む姿勢や貪欲に学びを深める熱心さが評価され、昨年10月からは製造責任者に抜擢。
二児の子育ての真っ最中ではあるが、パートナーの理解・協力も原動力となって、「川鶴の伝統を守りながら、より洗練された美味しい酒造りに全力を捧げたい」と口元を引き締める。
入社後の活躍は蔵の誰もが認めるところで、「日本酒ファンの拡大に繋がれば」と、地元の産物と日本酒を融合させたリキュールの開発にも腐心。
県産果実や大羽いりこなどとマッチさせ商品化することで、「女性や若い方など、少しずつではあるが消費者の底辺拡大に繋がっているのでは」と手応えを掴む。
製造責任者として美味しい酒造りに明け暮れる一方、「まだまだ旧い体質が残る酒蔵の働き方の改革にも取り組みたい」と意欲的。「酵母など生き物相手なので難しい部分もある」と前置きしつつ、業務の分掌や交替勤務によって「女性も含め、本当に酒造りに興味のある人が入ってきやすい環境を作りたい」と心中を吐露する。
多忙な時期も終盤を迎えているが、当面は毎朝6時に蔵に入り、どっぷり日が暮れるまで酒造りに向き合う日々。
立場上、時には社長や蔵人らとぶつかり合うこともあるが、「みんな美味しい酒を造りたいという思いは同じ。お客様の喜ぶ顔を思い浮かべながら、一歩でも前進できるように」と自身も仲間も奮い立たせ、チームワークの向上に繋げていく。
「スーパーなどで『あっ、お母さんが造ったお酒があるよ』と子供に言われた時は、思わず嬉しくなっちゃいますね」とニッコリ。
「今年はしっかりと基礎を固め、来年はきもと造りの純米にも挑戦したい」と微笑んだ。