「明日の株価は上がるか、下がるか」
理論上の確率は半々だが、勘ピューターで50%的中させることは容易でない。
人間の知能や勘がだめなら、コンピュータを使った人工知能(AI)にできないものかと、世界に名だたる大企業や投資ファンド、大学等が資産運用を目的とした人工知能開発を進めているのはご存じの方も多いだろう。
昨春本誌では、AI開発・テストに取り組むAI ASSET㈱(東かがわ市)を紹介。記事掲載後も定期的にジャッジ的中率、勝率の経過報告を受けてきた。
同社の経営母体は㈱ミロヴィーナスグループ(小西 覚社長)。
90年代から2009年に健康食品部門をM&Aで株式譲渡するまで、健康食品分野で一時代を築いた同社は、M&A以降グループ会社の資産運用というマーケティング事業に活路を見いだすべく人工知能開発に注力。
当初計画通り5年間の開発期間を経てAIが完成。昨年2月初旬から実用化に向けたテストを継続した結果、12月までの11カ月間で「予想的中率七〇%超、損益パフォーマンス四〇%超」という実績を確認した。
約1年間の試験運用の実績から実用レベルに達したと判断、今月より本格稼働をスタートしている。
ただしリスクはゼロではない。リスクを負いながらも、中長期で見ると確実にリターンを取れていることが本格稼働を後押しした。
為替や米国10年債利回りなど複数の金融指数でデータベースを構築し、日々コンピュータに学習させている。人工知能分野で国内トップレベルにあるSEの協力により開発したAIが、過去二千日の指数を分析し過去を学習、翌日の日経平均株価の上げ下げを予測する。
そのジャッジをもとに、日経平均株価に連動したファンド商品の購入と換金を、取引実績のある地方金融機関でおこなっている。
開発当初は半信半疑だった金融関係者も、高パフォーマンスを計上している同社AIへの関心を高めている状況だ。
現在、金融指数のバランス比の異なる8台のAIソフトが稼働中。ソフトによりばらつきはあるものの、平均すると前出の的中率、損益を叩き出している。
昨年は夏場の株価変動が激しく、10月末には日銀が追加緩和を発表し株式市場は大きく揺れ動いた。その環境下で、月平均利回りが約四%というパフォーマンスを計上していること、さらにAIというものが現実にここまで開発されたということに驚きを隠せない。
投資にあたり、市況ムードやネット上に氾濫するアナリスト達の予想コメントに翻弄されることも珍しくない。人工知能は、株価変動に直結する指数だけを追うため、そうしたロスから解放されるメリットも大きい。
「商品流通から金融へ」
時代の変遷にあわせ進化する地方の一企業グループが踏み出した新たな一歩。今後もAIを追跡していきたい。