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医療最前線〜ダヴィンチ手術〜


 今や人の手を超えたロボットを用いる医療が当たり前のように行われているのはご存じだろうか。
 香川県立中央病院(高松市朝日町 太田吉夫院長)では、癌などの疾患を対象にした手術に〝ダヴィンチ〟というロボットを用いた術法を採用し、多くの患者の命を救っている。
 ダヴィンチは、3Dハイビジョンモニターで術者が手術部位を確認しながら操作でき、通常の手術に比べると、格段に精密な手術が期待できる。また、手術中に起きる〝手ぶれ〟の防止機能も搭載されており、手術中のトラブルが少ない。さらに血管の認識が正確であるため、出血が少なく身体に優しいことが特徴だ。
 執刀医の腕代わりとなる3本のアームが付いており、手術用の〝鉗子〟という特殊な器具を取り付けて手術を行う。状況に応じて鉗子を取り換えることができるので、切開・切除だけでなく、切開部分を縫うことも可能だ。
 人間の手よりも可動域が広く、安全に使用できることが、このようなロボット支援手術の最大のメリットと言えるだろう。
 現在、全国で約二百台が導入されており、開復・内視鏡手術等のほとんどがロボットを用いた手術に移行するなど、医療業界では一般化している。
 普及するきっかけとなったのは2012年4月、泌尿器科がんで最も多いとされる前立腺癌の治療に対し、公的保険を使った医療が認められたこと。県内ではすでに、中央病院を含め3ヵ所が導入しているとのこと。
 同病院では14年7月にダヴィンチを導入し、すでに五十例以上の前立腺手術の実績を上げている。さらに、じん臓の部分手術も数例実績を残しており、幅広い術法に取り組んでいる。
 16年4月、じん臓癌が、前立腺癌に次いで保険収載になる見通しで、同院ではそれに先立ち、ダヴィンチを用いたじん臓癌の手術ができるように準備を行っているとのこと。
 泌尿器科の黒瀬恭平部長は、前任地である広島県の公立病院で約4年間勤め、その時にダヴィンチの導入に携わった。前任地から含め120ほどの執刀実績があり、現在は前立腺癌を主とした手術を務めている。
 黒瀬部長は「このような優れた医療機械が目立ってきていますが、実際に扱っているのは人間です。どんなに優秀な機械でも、扱いを間違えれば良い手術はできませんので、日々のトレーニングと習熟で安全かつ確実に取り組めるよう今後も努力してまいります」と抱負を熱く語る。
 また、若い医師への教育にも努めており、専門的スキルアップを図り、的確かつ安全な医療を提供できるような体制を整えている。
 ダヴィンチは様々な可能性を秘めており、現在も術式が進化し、確実な治療が発達しているとのこと。今後も多くの疾患への積極的な適用拡大に期待が寄せられている。
 一問一答は次の通り。

 ▼どのような治療に適用できるのか

 当院では、まず泌尿器科の癌に実践するために導入しましたので、現時点では主に前立腺癌への適用となっております。海外では、泌尿器科のみならず婦人科や外科など、その他の領域まで使用されており、幅広い分野で使用されております。将来的には当院でも幅広い専門科で使用できると感じております。

 ▼ダヴィンチを受けるのに年齢制限はあるのか

 高齢者でも、病状の進行具合によっては手術が可能です。少し前までは、高齢者に対して手術は控える風潮にありました。高齢者でも悪性度の高い癌で、健康状態が良好な方であれば手術の適応になることがあります。

 ▼過去に切開経験がある人でも適用できるのか

 以前に切開手術を受けられた方でも、ダヴィンチを用いた手術を行った例がありますので、その場合は医師の判断で適用しております。

 ▼手術中に停電などが発生した時、手術が中断になる恐れがあるのでは

 その他の手術と同様で、当院には停電時の緊急電力供給システムが備わっておりますので、問題なく手術を継続することができる体制になっております。

 ▼前立腺癌の発癌が目立つ年齢は

 一般的に60〜75歳の間の方がピークだと言われています。50代の人でも稀にですが、発症する例が見られます。

 ▼前立腺癌が発症する原因は

 食生活の欧米化によって、動物性タンパクの過剰摂取が原因の一つだと言われております。もともと日本ではあまり見られない癌だったのですが、生活習慣の変化に伴い、前立腺癌を患う方は年々増加しています。

 ▼前立腺癌の予防策は

 一般的には生活習慣の改善が、癌の予防に寄与すると言われておりますので、バランスのとれた食生活と適度な運動を心掛けることが大切です。


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